「…違う……。律希、あの時泣きそうな顔してた!」 「何も違わないって。梨花、忘れてるんだよ」 寸分も違わず覚えてるつもりだったのに。 いつの間に記憶が風化してしまったのか。 それすらもはっきりとはわからない。 小さい頃からずっと一緒にいた幼馴染みは、私の知らない間にちょっとだけ無愛想な男の人になっていた。 どれだけ可愛い女の子に寄ってこられても、顔色一つ変えないんだって、友だちから聞いたことがある。 ただ、今日は少し。 少しだけ頬を紅く染めているけれど。