イジワル執事と王太子は伯爵令嬢を惑わせる

レースの向こうにうっすら見えた影は、思ったよりも小さく細かった。結局アディは王太子の声すら聞いていない。確かにベッドからアディたちの位置までは距離があったが、数歩ですむその距離でさえ彼の声は欠片も届かなかった。

「見目はよろしかったですの?」

 興味津々で聞いてくるスーキーに、アディは王太子の様子や、これから始まる王太子妃教育のことなどをぽつぽつと話した。アディが話すにつれて、スーキーの顔も次第に曇ってくる。

「そんなご様子なのですか。……王太子様は、大丈夫なのでしょうか?」

「王太子妃選びを急いでいるのも、もしかしたら王太子殿下の先行きが短いからかも…」

 今回のお妃選びは、先行きの少ない王太子の思い出作り目的説が濃厚のような気がしてくるアディである。