ホールを出てバルコニーにでた青年は、首元に巻いていた蝶ネクタイを、軽く指でひいて緩め大きく息を吐いた。
「こういう場所は慣れないな……」
「お帰りになりますか」
 静かな声が背後からかかった。ふり向かないまま青年は答える。

「今日はこれ以上の収穫はないだろうし……馬車を」
「はい」
 背後の気配が消えたのを感じて、青年は少しだけ、笑んだ。

「病弱な王太子……ね」