イジワル執事と王太子は伯爵令嬢を惑わせる

「アデライード様は、おもしろいことをおっしゃるのですね」

 言われてアディは、口をひらいた長身の執事に視線を向ける。

「我が国の王太子を、まるで子供のようにお扱いになられる。彼の身分を軽々しくご覧になられているようでは困りますね」

「そ、そんなことは……!」

 慌てるアディをしり目に、ルースは天蓋にむかって頭をさげる。

「では、これにて失礼いたします」

 天蓋の中からの視線を、アディは確かに感じた。中にいる影は、チラリとも動かずにまっすぐにアディを見つめているようだ。

 アディたち三人は、もう一度礼をすると、ルースに促されて部屋を出た。