イジワル執事と王太子は伯爵令嬢を惑わせる

ルースに連れられて歩いている途中、窓から見える景色で、ようやくアディは自分のいたのが王宮の離れに位置する建物だという事がわかった。こじんまりしてみえたのも当然だ。この建物とは別に、はるか向こうにはここよりもさらに大きな建物がそびえている。

 アディがいたのは、王太子のための離宮だった。

「殿下、お連れしました」

 三人が連れていかれたのは、離宮のほぼ中央に位置する部屋だった。

 中からメイドの声が返ったのでルースは扉をあける。

 広い部屋だったが、中は薄暗かった。昼間だというのに、窓という窓にカーテンがひかれているせいだ。

 その部屋の真ん中に天蓋に包まれた大きなベッドが一つあり、その中に体を起こしている影が見える。わきには、女官らしき年配の女性が一人、控えていた。