イジワル執事と王太子は伯爵令嬢を惑わせる

「お待たせいたしました」

 決意を新たにしていると、すぐにルースが着替えて戻ってきた。

「では、これから殿下のもとへお連れします」

(え?)

 促されて立ち上がった二人も、アディと同様どことなく戸惑っている。金髪の女性が、口を開いた。

「王太子妃の候補となるのは、これだけですの?」

「はい」

 答えたルースに、アディは驚きを隠せなかった。

 事情があるとはいえ、まさか王太子妃候補がたった三人とは思わなかったのだ。

 王宮からの声がかりにもかかわらずたった三人の令嬢しか集まらなかったことに、同情めいた気持ちがアディの胸に湧き上がる。

 あまりにも、それは寂しい光景だった。未来を望まれない王太子は、今どんな気持ちでいるのだろう。

 他の二人も、一瞬驚いた顔はしたものの、すぐに納得したような顔つきになった。その顔が、諦めなのか達観なのか、アディにはわからなかったが。