イジワル執事と王太子は伯爵令嬢を惑わせる

見るともなしに振り返ると、金髪の女性はつんとした表情のまま姿勢よくソファに腰掛けていた。アディのことなど、一瞥もしない。

 対して栗色の髪の女性は、振り返ったアディに気がつくと、にこり、と笑みを返してくれた。

(なんか、二人とも賢そう)

 アディは、美人の二人を目の前にして少しばかりくじけそうになってしまった。

 これから幾人の令嬢が現れるのかはわからないが、この中で勝ち残っていかなければ王太子妃にはなれないのだ。

(弱気になってはだめよ。必ず勝って、値段を気にせずにキャベツを買えるようになってみせるわ!)

 アディの思考にまで、貧乏生活はしみついてしまったようである。