「え、ええ、その方はね、現王太子であられるテオフィルス殿下のいとこにあたられる方で」
「王位継承権第二位の方ですの。つまり」
 白い仮面の夫人が、口元を扇で隠して小さな声で囁いた。

「もしテオフィルス殿下に何かあれば、次の王太子様はその方に」
「あの方には、内妻はもう幾人かいらっしゃるのよね」
「ええ。内妻にはすでに御子も誕生しておられるから王太子になられる資格は十分おありなのですけれど、まだ正妻をお持ちでない。やはり、高貴な姫をお望みなのかしら」
「ですわよね。このまま様子を見て来年を待たれるのかも……」

 夢中になって話し始めた女性たちは、鳥の仮面の青年が静かにその場から離れたのに気付かなかった。