イジワル執事と王太子は伯爵令嬢を惑わせる

馬鹿にされていると思っていたのは、アディの勘違いだったのか。ルースはちゃんと、このドレスに籠められた意味を見抜いていた。

(だったら素直にそう言えばいいのに……変な人)

 そう思いながら、アディは案内された部屋へと入る。

 そこには、すでに二人の女性がいた。おそらく、彼女たちも王太子妃の候補なのだろう。

 一人は、金の髪に勝ち気な瞳をした女性。もう一人は栗色の髪をした優しそうな女性。対照的な二人が、それぞれソファに座っていた。

 アディはなんとなく二人に会釈をすると、立ったまま窓から外を眺める。

 綺麗に手入れされた庭には、色とりどりの花が咲いていた。

(日当たりのいい庭……ああそうね、そろそろとうきびを撒かなきゃいけない時期だわ。ランディ、ちゃんとやってくれるかしら)

 今の騒ぎで実家を思い出したアディは、そんなことを思う。