イジワル執事と王太子は伯爵令嬢を惑わせる

「あ、ルースさん!」

 だが、こちらに気づかなかったメイドが、人がいるのを見てあわてて足をとめた。話に夢中になっていて、ルースに気づくのが遅れたのだ。

「きゃっ」

 一緒に歩いていたもう一人のメイドが、急に止まったメイドにぶつかって二人が倒れる。彼女の持っていた水の入ったバケツが宙を飛んだ。

「あ!」

「す、すみません!!」

 とっさにルースがかばってくれたおかげで、アディには水はかからなかった。メイドは、床に座り込んだまま真っ青な顔になって震えている。ルースが、すっと片手を出した。

 どんな罵詈雑言がでてくるかと、アディは他人事ながらはらはらとその様子を見守る。すると。