イジワル執事と王太子は伯爵令嬢を惑わせる

流行りのドレスも社交界での話題も、アディは全く興味を持てなかった。そんなものがなくても、今までのアディは困らなかった。

 けれど、国の中心となる王家に関わるという事は、結局好き嫌いにかかわらずそういうものに囲まれて生きていかなければならないのだ。それをアディは、痛いくらいに肌で感じた。

 ここは、ロザーナとは違うのだ。

 そうは思っても、複雑な心境で娘を送り出してくれた父の想いまでも否定されたような気がして、アディは悔しくてたまらなかった。

 アディたちがちょうど廊下の交差に来た時だった。曲がり角の向こうから女性達の明るい声が聞こえて、アディは顔をあげた。

 こちらへ向かっている気配を感じて、角を曲がろうとしたルースが足を止める。