イジワル執事と王太子は伯爵令嬢を惑わせる

たとえドレスがみすぼらしいと言われても、王宮へ来て早々に王太子妃失格の烙印を押されることだけは避けたかった。他の候補者に負けるならいざしらず、アディがここで地を出して暴れたのでは、モントクローゼス伯爵家の評判に泥を塗ることになってしまう。

 屋敷から見送ってくれた時の父の不安げな顔を思い出して、アディは何とか気持ちを落ち着ける。

「……お心遣い、ありがとうございます」

 荒ぶる心をおさえて小さくそう言うと、こころなしか、ルースの目が見開かれたような気がしたが、彼は、いえ、と言ってまた前を向いて歩き出した。

 後ろを歩くアディは、唇をかみしめてうつむいた。