イジワル執事と王太子は伯爵令嬢を惑わせる

「この度は王太子妃候補となられましたこと、心よりお祝いを申し上げます。これより、他の候補者のかたがたと共に殿下にご挨拶にまいります」

 え……

 思わずアディは驚きの声をあげそうになって、さりげなく口元を扇で隠した。まさか、王宮にきてすぐに王太子に会えるとは思っていなかったのだ。

 スーキーにはその部屋で待つように言った後、その執事はアディを連れて部屋をでた。

 後ろをついて歩きながら、アディは執事の背中に小さく声をかける。

「あの……」

「何でしょう」

「私の部屋に、覚えのないドレスがございました。あのドレスはどうしたことでしょう」

 ルースと名乗った執事は、少しだけ顔をアディに傾ける。その横顔は、どこか得意げだった。