イジワル執事と王太子は伯爵令嬢を惑わせる

素敵、と思ってしまった第一印象を、アディは強く撤回した。

 とんだ性悪執事だ。

 だが、見た目は優しそうな執事の態度に、メイドたちが口々に、ほう、とため息をつくのが聞こえる。

「さすがはルースさんですわね。あんな美しい令嬢とお並びになっても、全く見劣りしませんわ」

「ええ。まるで一対の絵のよう。目の保養ですわ」

「見て。普段クールなルースさんが、あんなに誇らしそうに微笑んで。やっぱりルースさんでも、美しいご令嬢とご一緒されるのは嬉しいのでしょうね」

「ああ、私もあんなふうにルースさんにエスコートされてみたい……」

(大人気じゃないですか、執事さん)

 ひそひそと聞こえる噂話を聞きながらアディは、頭の隅でそんな風に考えていた。その間にも、二人は居並ぶ使用人たちの間を通り抜けていく。

 結局、部屋へとたどり着くまで、その執事がアディの手を離すことはなかった。