伯爵家の娘として、確かにアディは王太子妃になることも可能な身分だ。いずれ自分が、どこか家柄の釣り合うところへ嫁ぐこともわかっていたから、その相手が王太子というのは、想像しうる中で一番良い条件の相手ではないだろうか。

 父の言うように好きな人に嫁ぐことができれば一番幸せなのだろうが、まだ恋も知らないアディにとっては、愛だの恋だのという不確かなものよりも王太子妃という目に見える地位の方が魅力的だった。

 結局のところアディにとって結婚とは、家同士をつなぐための政略結婚以外のなにものでもないのだ。

 アディが嫁ぐ王太子とは、どんな人だろう。

「お嫁さん……か」
 アディはぽつりとつぶやいた。