責任感の強い娘の性格を、父はよくわかっていた。

 母をなくした時も、放心していた自分と弟の代わりに伯爵家を取り仕切った娘だ。今回彼女が女官として王宮勤めをすることになったのも、数年後に爵位を継ぐ弟のためにこの伯爵家を立て直そうとしているからだということを、父は知っている。

 なにもできない自分を不甲斐ないと思う気持ちはあれど、貴族の息子としてぬくぬくと育てられてきた彼にできることは、せいぜい庭木をめちゃめちゃに切るくらいだ。

「無理することはないんだよ」
「やあね、お父様。無理なんてしてないわ。幸い、まだ私には婚約者もいないし、お嫁に行きたくないと駄々をこねるほど好きな人もいないもの。私は、全然かまわないわよ」