イジワル執事と王太子は伯爵令嬢を惑わせる

「お前が今考えるべきなのは、俺の事だけだろう?」
「も、もちろん、殿下のことも考えておりますわよ?」
「『も』?」
「あ、いえ、その……」
 言葉遣いに失敗したことに気づいて焦るアディに、テオが眉をひそめる。

「気に食わないな」
「殿下?」
「その呼び方も」

 間近で見つめるテオの瞳が、いつもよりも熱を帯びていた。その様子に、アディは、少しだけ恐怖を感じる。
 この後一体自分がどうなるのか、アディはまだおぼろげにしか知らなかった。