「だ、大丈夫です」

「嘘つけ。緊張して足が震えているぞ」

 実際、いつもより底の高い靴を履いたアディは、慣れないドレスに足をとられそうでかなりその足元は怪しかった。

 表面上は睦まじそうに寄り添って、二人は会話を続けた。

「これくらい、たいしたことありませんわ」

「意地っぱり。お前が階段の下まで転がり落ちたら、キリリシアの歴史に名が残るぞ。ああ、それも面白そうだな」

「な……!」

「強がるな。ほら」

 テオが、アディの前に片手を差し出す。ドヤ顔にいくばくかむっとしたアディだが、ここでテオの言う通りに転がり落ちるなんてさすがにごめんだ。