「ただ面白い女、だから妃にするのではなく、殿下は……」

「黙れ」

 そう言って、アディが口を開く間もなくルースは口づけを落とす。アディはわずかに抵抗するが、力強い腕に抱き込まれてそれ以上動けなくなる。

 長い長い沈黙の後、ようやくルースはアディから離れた。

「……でん、か……」

「名前で、呼べ」

「……テオフィルス様……」

 それが、彼の本当の名前。

 潤んだ瞳で見上げたまま、アディは少しだけ意地悪に微笑んだ。いつも彼がそうしていたように。