イジワル執事と王太子は伯爵令嬢を惑わせる

「なにか、お聞きになりたいことでも?」

 アディの視線を感じたのか、執事の口調でルースが言った。それは、ここへきてから毎日聞いてきた声だ。

「……あなたは、誰?」

 見上げてくるアディに視線を合わせると、ルースは口もとだけで笑った。

「もうわかっていらっしゃるのではないですか?」

「あなたの口から聞きたいのです。あなたの本当のお名前と……なぜ、こんなことをしたのかを」

「もしかして、怒っておられるのですか?」

「もしかしなくても、怒っています」

 ぎ、とアディは目の前の青年を睨みつける。