アディは今日、国王陛下から正式に王太子妃としての勅令を受ける。けれど、その胸の中にいるのは、アイスブルーの目をした黒い影だ。

 忘れなければならない。そう思えば思うほど、彼の人の影は鮮明に胸に浮かんでしまう。

 いつの間に、こんなにも彼のことを思うようになっていたのだろう。

 気がつけばまたうつむいていたアディの目に、きれいに刈られた芝が目に入った。その芝が、ぐにゃりとゆがむ。

 自分が泣きそうになっていることに気づいて、アディはあわてて顔をあげた。ぴしぴしと自分の頬を叩いて気合を入れる。