少しだけ、ルースの目が細められる。

「あなたの執事であった最後の思い出に、これくらいはいいじゃないですか」

「本当に、自分勝手ですね」

 にらみつけるアディに吐息のかかる距離まで近づいて、ルースは軽くため息をついた。

「……アデライード様。このような時は、目を閉じるものです」

「ルースだって、閉じてないじゃないですか」

「男はいいんです」

「だったら、女だっていいはずです」

「では、そのままでも結構ですが」

 にやり、とルースは笑った。

「口づけている間、ちゃんと耐えてくださいね」

 アディが何を言う間もなく、二人の唇が重なった。