イジワル執事と王太子は伯爵令嬢を惑わせる

「ご心配なさらないでください。誰にも、あなたを傷つけたりさせません。あなたの執事である私が、必ず守ります」

 アディは、自分の体に回された力強い腕に、ぎゅっとすがりつく。震える体を包み込んでくれる温かさが、今は何よりも頼れる気がした。ルースの言葉で泣きそうになっている自分を自覚して、きゅっと唇をかみしめる。

「このままだと、はなみず、つきますよ」

「それをネタに強請るという手もありますね」

 それを聞いて笑おうとしたアディの目から、一粒の涙がこぼれた。一度涙腺が決壊すると、あとはもう止められない。

 声を殺して泣き続けるアディを、ルースは黙って抱きしめていた。