「私は……」

 言葉に詰まったアディを見て、マルセラははっと気づいたように言った。

「アデライード様のお立場も考えず、差し出がましいことを申しました。お許しください」

 どうやら思ったよりマルセラは、ルースに対して強い感情を持っているようだ。確かにあんな性格を知っていれば、人付き合いをうまくやっていけるか心配にはなるだろう。

 そうやってマルセラがルースの事を心配する気持ちを、アディは愛おしいと感じた。

 アディはそっと彼女の手を取ると、その瞳を見つめる。

「もしも私が王太子妃になることができましたら、あなたやルースと共に、王太子殿下を支えていきたいと思います。その時はよろしくお願いしますね」

 微笑むアディに、マルセラは一瞬目を丸くしてから、はい、と顔をほころばせて答えた。