「こんにちは、いやさっきぶりかな?これからよろしく」

何故か私の家で手を差し出しにこりと笑う男の人。

予想と違いすぎて頭が追いつかない。

私はこの手を取り仕方なくよろしくお願いしますと呟いた。

何故こんなことになったのか…

思考は今朝まで遡る。

―――

朝勢いよく母に起こされた。

まだ眠い…。

昨日も夜遊びしてたし…。

夜遊びといってもちょっと年齢を嘘ついてパーティしてただけだけど。

母と父はそのことに対して何も言わない。

気にも留めていないかもしれない。

私は階段を駆け下りて急いで支度をした。

いつものメイクもバッチリだ。

ただ家を出る際母に今日は早く帰ってきなさいと言われた。

珍しい…。

今日は何かあったかなと考え事をしながら自転車を漕いでいたら遅刻してしまった。

担任の先生はいつもの爽やか笑顔で許してくれた。

担任の先生は人気がある。

私の友達たちは私の遅刻したことを笑ったけれど…。

私のいるグループは男女5人組で、昨日もパーティにいったメンバーである。

クラスの一部からはパリピとか派手とか言われて馬鹿にされたり嫌われてたりする。

そんなつもりもさらさらないしみんなで楽しんでるだけなんだけどな。

友達の名前は、あや、ゆい、りょー、それから、ゆうた 。

あやとゆうたは幼なじみ、ゆいとりょーは付き合ってる。

そう、私だけなんか居ないんだよなぁ…。

まぁそんなこと関係なしに仲が良いんだけどね。

担任の先生の名前は 榊原先生。

榊原先生と仲良しなのは 月島先生。

あんなに明るい榊原先生が暗いメガネの先生と仲が良いとかよくわかんないけど…。

私はやっぱり榊原先生がすごく好き。

なんたって優しいしイケメンだもん。

1時間目の授業は月島先生の数学の授業だった。

数学は得意だかららくらくほいほい←

めずらしく月島先生に指名されて黒板に答えを書いた。

いつもは指名とかあんましないんだけどな…。

答えを書く時にじっと見られた。

どうしたんだろう?

怖いんだけど…。

そして何かを堪えきれないようにクスッと笑った。

誰も授業に集中しないから気づいたのは私だけかな…?

その時光の加減で顔が一瞬良く見えた。

綺麗な顔だった。

なんだか得した気分だった。

硬い月島先生が笑うのはレアだと思う…。

その後の授業が終わったあとも月島先生と目が合うことが多かった。

ちなみに榊原先生とも。

―――

そして早めの4時に帰宅して2時間後…

今に至るんだけども…。

状況は理解できなかった。

よろしくって一体何が…?

私は目の前で親と話す月島先生をじっと見つめた。

「ねぇお母さん、どういうこと?」

母は忘れていたことを思い出したかのように私を見てそれから父を見た。

「もしかして、まま、あめになんも言ってないの?」

父は母に聞いた。

「ええと…忘れてたわ。今から言うから大丈夫よ!」

「あめ。お母さんとお父さん、イギリスに引っ越すから!」

…??

母親の言ったことも理解できない。

ええと…

やっぱり理解できない。

「僕から説明しますよ。」

月島先生が口を開いた。

「僕は君のお父さんとお母さんの知り合いでね、それで教師もしてるしってことで君を預かることになったんだ。」

つまりつまり…?

お父さんとお母さんはイギリスに引っ越すけど私は日本に残る、でも一人暮らしはさせられないから信用できる人のところへ…ってこと?

「てゆーかなんで急にイギリス!?」

私はやっと落ち着いて質問できた。

「お父さん、デザイナーやってるだろ?それで転勤しろってさ」

「私はパパと離れたくないしいつまでもラブラブでいたいから着いてくの~!」

「なぁ、ママ?」

「うんパパ。」

でた!馬鹿夫婦…。

いい歳してラブラブすぎんのよ。

月島先生もこれには引き気味だ…

そりゃそうだ…

ただ私の両親はいざとなったらやってみるまで進めてしまう。

こうなったら後には引けない。

もちろん新しい生活に少しワクワクしてる自分もいる…。

けどどうせなら月島先生じゃなくて榊原先生が良かったなぁ。