助かった。
私の腕を引っ張ったのは、夏帆と共通の友人、志水由香里だった。

「由香里、た、助かったよ〜」

「助かったよ!じゃないわよ。なんであんたが、ここでナース服着てんのよ!」

救急が入ってたらしく、処置室から出てきた由香里は私を見つけるや、そのままの格好で、ナースステーションの奥に連れて行った。昔から知ってるだけあって、夏帆か私かっていう事はすぐに分かってくれた。

私は、今日の事を伝え、どうにかして1日ごまかすら手伝って!と頼みこんだ。

「…で?仕方ないから、1日だけ夏帆のフリするのね?で、私に助けてほしいって?バカじゃないの?はい、いいわよ〜、って言うと思った?」

だよね。
そんな簡単なものじゃ、ないよね。
うん。
正直に話しなきゃね。

「だよね?ちゃんと話してくるよ」

そう言いながら、とりあえず夏帆の退職届を取りに行こうとして、由香里に首根っこを掴まれた。

「あんた、どこに行く気よ」

「え、退職届を取りに…」

「そんな事させる訳ないでしょ?夏帆が戻ってくるまでの間、やってもらうわよ!」

えぇ〜っ!!
さっき、バカじゃないの?って怒ったじゃない!