「えー、今日からここで働いてくれる事になった。南條佳織先生です。救命医師としてはこの間の事で、皆も知ってるだろうから、よろしく頼むよ。じゃ、南條先生」

「はい…」

医局長に促され、私は一歩前に出た。

「今日からお世話になります。南條佳織です。以前ここで働いていた夏帆は双子の妹になります。間違える事もあるかと思いますが、南條でも佳織でも呼んでいただければ。よろしくお願いします」

頭を下げて挨拶すると、由香里が後ろの方で目配せしてニコっと笑った。
私も自然と笑みが溢れた。


「じゃあ、申し送りも済んだ事だから、みんな持ち場に戻って。南條先生は、来てもらえますか?」

「はい」

医局長の言葉と共に、スタッフが自分の持ち場へと移っていった。私は医局長の後をついて行った。



「ねぇねぇ、双子ってあんなにそっくりなものなの?」
「どっから見ても夏帆さんですよね?」
「いや、南條より少し落ち着いてないか?」

残ったスタッフはその場で、佳織のことをあーでもないこーでもないと話始めていた。

「夏帆と佳織は見た目はそっくりだけど、中身は全然違うわよ。あれでも、だいぶ分かりやすくなったんじょない?学生の頃は見分けがつかなかったんだから」

「え?由香里って、知ってるの?二人の事」

「だって、同級生だもの。知ってるわよ。さ、仕事するわよ!」

これ以上話が出来ないように、由香里は仕事をするように声をかけた。

普段の救命の静けさを取り戻したその時だった。

♪♪♪♪♪♪ ♪♪♪♪♪♪

救命の電話が鳴り響いた。