救急隊を呼んだ私は、担架を持って走ってきた救急隊の一人が私の名前を呼んだ。

「南條さん!」

「え?」

誰?と思ったその時、東和総合病院にいる時に、よく来ていた救急隊の岡田さんだった。迷いはなかった。

「私は救命医師です。早く、救急車に乗せて!急いで!」

こんな所で再会の挨拶などしている時間などなかった。
それに、今私は、医師として治療に当たっているのだから。

岡田さんは少し動揺していたけれど、すぐに救急車に女の子を乗せた。
そして、受け入れ先を探し始めた。

「…ダメです…近くの小児センターは受け入れは無理だと…」

「小児センターでなくていいから、ここから近い病院に運ぶのよ!早く!」

受け入れ先が見つからず、救急車の中で刻々と時間が過ぎ去ろうとしていた。

「…分かりました。はい!今から…え?あ、はい。救命のドクターも一緒です、はい」

「どこ?」

「あの…東和総合病院です」

「っ…そう、急いで!」

運命と言うのは、時には残酷な物しか与えないんだろうか。

心の準備も出来ないまま、私は医師として、東和に行くなんて。


車はサイレンを響かせて東和総合病院に向かって走り出した。