「お疲れ様でした!」

逃げなきゃ…
ここから早く出て行かなきゃ…

夜勤が終わった私は、中元先生から逃れるようにナースステーションを飛び出した。

今ならまだ大丈夫。
中元先生は、昨日の患者の様子を診に行ってるから、今なら大丈夫のはずだ。

「夏帆!どうしたの?今日急ぎ?」

「あ、う、うん。父のび、病院にね」

慌てて帰る私を由香里が引き止めた。
お願い、私を早くここから出させて。

由香里は父の、と言うと気をつけてねと、すぐに解放してくれた。

助かった…

後ろを振り向かず、私はドアに手をかけた。

ガシッ

「っ、え…」

誰かの手が、ドアにかけた手を上から強く握られていた。

恐る恐る振り返ると、そこには血相を変えて私を呼び止めようとする中元先生が立っていた。走ってきたのか、肩で息をしていた。

「な、南條!ちょっと話がある、待っててくれ!」

待っててくれ、そこに何があるのか私にはすぐに分かった。

バレた…

さっきの事で何かに気がついたんだ。


「す、すみませ…」

「中元先生!救急車入ります!お願いします!」

「あ、あぁ…分かった…」

助かった…

「っ、先生。行って下さい。私も急ぎの用事があるので…また」

「分かった、気をつけて帰れよ」


後ろめたい気持ちを抑え、私は病院を足早に出た。
次があると思ったのだろう…だけど…

ごめんなさい。

私は今日が最後の勤務なんです。