「いい?早く帰るのよ?中元先生に捕まったらおしまいよ?分かった?」

うんうんと頷いた。
って、言うか、呼び止めたの由香里じゃん!

は、早く帰ろう。

私は慌てて病院から飛び出した。

「はぁはぁ、ここまでくれば大丈夫…」

病院を裏口から出て、駅に向かって歩こうとした。

グイッ

え?

腕を引っ張っられ、振り返ると息を切らした中元先生が私の腕を掴んでいた。

「なんで、逃げんだよ。待てって言っただろ?」

「あ、あはは…聞こえてませんでした」

「乗れ、送るから」

顎で後ろに止めてある車に乗れと、指図されてしまった。

なんて横暴な…

どうすりゃいいのよ。
由香里には乗るなと言われているけれど。

でも、あまり裏口で騒いでいると、みんなに気付かれるかもしれないと思った私は素直に車に乗った。


「何むくれてるんだよ」

「なっ、むくれてなんかないですよ!ただ強引だから…」

「だから…それがむくれてんじゃねーのか?」

信号が赤に変わったのかブレーキを踏んだ中元先生は、横を向いた。

「お前…、彼氏とかいるのか?」

「…っ、なんでそんな事先生に話しなきゃいけないんですかっ!」

自分でも顔が赤くなっているであろう事は分かっていたけれど、必死になって反論していた。

「…クックっ、いねーんだな。そんなに怒るなよ」

抵抗虚しく、私には彼氏がいないと決定づけされてしまった。
反論しても、笑いながら先生は、はいはいとハンドルを握っていない手で私をあしらった。
そしてそのまま、また車を発進させた。

なんでこんな事になったんだろう。