雨があがったら、キミが笑顔になりますように。

【ひめside】

私は、高木ひめ。今日から、中学1年生。
私の家の近くには、佐藤アキラと佐藤涼くんが住んでいる。アキラとは同い年で、涼くんとはひとつ離れている中学2年生。ふたりは、とても仲のよい兄弟。
私とアキラ、涼くんとは、幼馴染で、小学校は毎日一緒に登校していた。
今日は、中学校の入学式。アキラと一緒に行こうって、約束したのになあ。「明日の集合時間ね。」って、昨日メールしたのにー。もう10分もたってる・・・。
私と行きたくないのかな・・・。そんなことを考えていると、
「悪い、ひめ!!待ったか?」
と、アキラが後ろから声をかけてきた。私は
「もう!遅い!!入学式から遅刻するつもり!?」
と、少し怒りっぽく言った。
「なあ、ひめ。待たせたのは悪いけど、入学式、8時30分からだろ?まだ、7時だぜ?」
と、アキラが言うので、スマホの時計を見ると確かにまだ7時だ。
「でも、アキラ?」
「んあ?」
「私、メールで、8時って言わなかったっけ?」
と、わざとらしく言ってみた。するとアキラが、
「お前、もし8時って言ってたら、7時にこねーだろ。」
ギクッ。アキラって鋭い。私は、
「はいはい、すいませんでした。7時って送りました。許してください。」
と、言うと
「はいはい、許してやるよ。」
曖昧な返事をするアキラと、肩を並べて学校を目指す。
「なあー。まだ時間はえーし、近所の公園にでも行かねーか?」
急にアキラがそう言った。
「そうだね!!」
私は、笑顔をみせて、アキラに返事をする。私は、アキラが好きだ。小さいころからずーっと。私は、アキラの横顔を見るのが好き。スラッとした顔立ち、整った顔。そんなことを思っていると、
「んあ?何か顔についてるか?」
私は、ドキッとしてついつい目をそらしてしまった。すると、
「お前なー・・・。返事しろよー!!」
と、言いながら私の頬をつねってくる。
「それはやめてよー!!」
こんなの、日常茶飯事だ。言い方を変えると、この日々が続いてほしい。だから、私はこの時間が大好き。そんなことを考えて入ると、公園に着いた。
「7時15分か・・・。8時くらいまでは、いられるか?」
「そうだね。」
ここは、私とアキラ、そして涼くんとの三人の大切な、思い出の場所。
「久しぶりに来たな。」
「そうだね・・・。いつもは三人出来てたね。」
「ああ。」
アキラが、朝の風を感じるように、髪の毛を触る。そんな仕草にドキリとしてしまう。こんなの反則だ。幼馴染の私が言うのもなんだけど、アキラは、どちらかと言うとイケメンだと思う。だからこそ、ちょっとした仕草にもドキッとしてしまう。正直に言うと、私は、告白したい。でも、もし振られてしまったら、今の関係に戻れなさそうで怖い。そんなことになるくらいなら、「幼馴染」という立場でいい。
「ひめ?ボーってしてるみたいだけど、そろそろ時間だ。学校へいこうか?」
「え!?もうそんな時間!?」
「クラス、お前とおんなじクラスがいいな。」
(え・・・。今なんて・・・)
「えっと・・・?」
「って!マジで時間やべー!!おい!!ひめ!!急ぐぞ!!」
私の声をさえぎってアキラが言う。
「本当だね!!急ごうか!」
私たちは、早歩きで学校を目指す。学校に着いて、クラス表をみた。
(えっと、高木・・・高木・・あ!あった!!1組か・・・。アキラは??
どうなんだろう・・・)そう思っていると、
「ひめ!!お前、何組??」
「えっと・・・、1組・・・。」
「マジ!!??俺も!!やったな!!同じクラスだ!!」
(やったー!!!!!)そう心で思って、アキラとハイタッチ。
そして、アキラと教室を、目指す。教室を目指していると、声をかけられた。
「アキラ!ひめちゃん!!」
その声に振り向くと、そこには涼くんの姿が。
「兄貴!!」
「涼くん!!」
私たちは、声をそろえて言った。
「入学おめでとう。今日から一応僕は、先輩だ。ごめんだけど、学校では、敬語を使ってくれる??」
「は~い。」
「『はい』は短くね。僕は入学式の準備があるから行くね。また、入学式でね。」
「はいっっ!!」
そう言って、私たちと涼くんは別れた。私たちは今度こそ、教室へ向かった。
教室に入って、座席表を見ると私の後ろは、「高見桃花」と書かれていた。名前からして、かわいいらしそうな子だ。
「あっっ!あの・・・!!」
突然声をかけられて、びっくりした。声の方向を見ると、かわいらしい女の子が立っていた。
「えっと・・・」
私が呆然としていると、
「あ・・・えっと・・・」
彼女は人見知りなのか、なかなか本題に入らない。彼女の鞄には「高見桃花」とかいてあった。
(もしかして、後ろの子?)そう思って、
「えっと・・・、高見さん??」
と、聞くと、
「えっと・・・はい・・・。高木さんですよね??」
と、返事をしてきた。
「うん!前後同士仲良くしようね!。」
「えっと・・・はい!!」
軽い自己紹介が終わると、タイミングよく、チャイムが鳴った。担任の先生が入ってくると、ザワザワした教室が静かになっていった。
「え~担任の黒木だ。みんな入学おめでとう。今から20分後に入学式だ。全員体育館に集合だ。」
「はーーい!!」
みんなが声を合わせて返事した。静かになっていた教室が再びさわがしくなった。
「高見さん!一緒に行かない??」
「えっ!いいんですか?」
「もちろん!!」
高見さんと教室を出ようとしたとき、「ひめ!!」と聞き覚えのある大好きな声で名前を呼ばれたので、振り返った。
「ひめ!一緒に行かね??」
そう言われて嬉しかった。でも、(高見さんとたくさん話したいなあ)と思って考えていると、
「いいよ、高木さん。彼と一緒に・・・」
彼女が言い終わる前に
「えっと・・・、高見さん・・・?も一緒に行く?それでいい?ひめ?」
私はドキッとした。なぜなら、まるで心の中を見抜かれたように感じたから。
「私はいいけど、高見さんは?」
「私もそれでいいよ!」
二人でアキラに返事すると、
「じゃあ、決まりだな!」
彼はニカッと歯を見せて笑った。
体育館に着くまでは、沈黙だった。
入学式が終わるとアキラが、
「うちの中学校の先生、全員キャラこくね?」
アキラが言うので考えてみると、確かにと納得した。あまりまだ知らないけれど、担任の黒木先生は、‘ザ・体育系’って感じがするし、校長先生は、ひげが長いから、サンタクロースみたい。そう考えていたら、急にアキラが
「おーい、高見さん?」
高見さんに声をかけた。いきなり声をかけられたから彼女は、とてもビクッとして、私の服をギューっとつかんだ。
「えっと・・・高見さん・・・いや、桃花。確か桃花だよね??俺、君に心を開いてもらえるように頑張るから。どれだけ時間がかかってもいい。だから、俺のこと、アキラって呼んで。」
「う・・・ん・・・。」彼女が、か細い声で返事した。私は今のアキラの言葉を聞いて、胸がツキンとした。私以外の女の子を下の名前で呼ぶのがいやだった。でも、見た感じアキラは、高見さんを好きそうな感じはしない。でも、いやだった。アキラが好きだから。
「ひめ?お前今日ボーって、しすぎ。ねむてーの?」
その言葉にハッして、
「いいや、そういうわけじゃないよ!!えっと、高見さん、私も『桃花』って呼んでもいい??」
慌てて返事する。すると、
「もちろん!私も『ひめ』って呼んでいい?」
そう言われて、
「うん!!」と、返事した。
そんな私と桃花の会話を、アキラは温かい目で見守ってくれてる。
教室に帰り、いろいろ学校の説明をされて、午前中で帰った。教室を出るときに桃花に声をかけられた。
「ねえ、ひめちゃん・・・。えっと・・・、どっち方面なの??」
「えっと、私もアキラも、東方面だよ。桃花は??」
「そっか・・・。私、西方面なの・・・。」
「そっか。じゃあ、三人で校門まで行く??」
「うん!!」
「アキラ!帰ろー!。」
私が言うと、アキラは、「了解!!」と、元気よく返事して、荷物を持って私たちのところに来た。校門に着くまでは、少し気まずい雰囲気になってしまった。
「ねえ、アキラ、桃花西方面なんだって。」
「マジか・・・。まだ昼だし、俺の家来ても良いけど・・・。」
「えっと・・・、いや・・・帰ります・・・。」
「そっか・・・。気をつけて帰れよ?」
「はい・・・。」
校門を出るときに「バイバイ。」と言って別れた。
「ねえ、アキラ。」
「ん?」
「涼先輩のスピーチかっこよかったね。まだ2年生なのに、あんなに堂々としててすごいね。」
「確かにな・・・。弟が言うのもなんだけどさ・・・、兄貴はすげーよ。あんな兄貴の弟であることが恥ずかしい。」
ドクッ。胸が嫌な音をたてた。なぜか、今のアキラの言葉に、重要な意味があるような気がして。家に着いたとき、「遊ぼうぜ。」と誘われたけど、「つかれた。」と言って断った。
次の日。家の前には、アキラと涼先輩の姿が。ガチャっと玄関の扉を開けて、「おはよー。」と二人に挨拶。
「なんだか、三人で登校するの、久しぶりだねー。」
私が言うと
「確かにね。僕が一つ上だから、本当に久しぶり。」
「ああ。確かに。俺とひめが、小学5年のとき以来か。」
今日は学校に着くまで三人で、世間話。私からすると、この三人でおしゃべりする時間は、本当に大切。だって、私はこの三人でいるのが、大好きだから。そんなことを思っているうちに、学校に着いた。昇降口で、涼先輩と別れて、アキラと教室へ向かっていると、桃花に出会った。
「お・・・はよう・・・」桃花は恐る恐るアキラと私に挨拶。アキラは、「そんなに緊張しなくてもいいのに・・・。」って言っていたけど、桃花は下を向いて、小さくうなずいた。私はそんな様子を見守っていた。
それからと言うもの、桃花は少しずつアキラに心を開いていった。桃花がアキラに喋り掛けるたびに、アキラは嬉しそうな顔をしていた。私は、嬉しいような寂しいような、複雑な気持ちになっていた。
そんなある日の昼休み。私は桃花からある相談を受けた。
「どうしたの?」
「あのね・・・、実は私アキラ君のこと、す・・・好きになっちゃった。」
それを聞いた私は、頭を殴られたような衝撃が走った。
「ひめちゃん・・・?」そう言われてハッとした。
「そ・・・そうなんだ・・・。うまくいくといいね。」私はそう言うしかなかった。
桃花の告白を受けたその日から私は、アキラと距離を置くようにした。