ずっと胸は苦しいままで、彼を見つめることしかできない。

すると織田くんは、急に顔を近づけてきた。突然彼の中性的な整った顔が近づいてきてびっくりする中、少しだけ唇の端を上げた。

「今日、俺と一日一緒に過ごして少しでも楽しんでくれた?」

「も、もちろん! すごく楽しかったよ?」

心臓をバクバクさせながら答えると、すかさず彼は口を開く。

「よかった。……でも今日はただ、遊びに行ったわけじゃない。デートしたんだってことをちゃんと覚えておいて」

「――え」

どういう意味……?

理解できない私に、織田くんはそっと瞼を閉じた。

「織田く――」

言葉が続かない。

一瞬だけ感じた頬への温かな感触。それはすぐに離れたものの、目と鼻の先に織田くんの顔があって、少しずつ認識していく。

織田くんが私の頬にキスをしたんだって。

「え……え?」

キスされた頬を手で触れながらアワアワしてしまう。