焦れ恋ロマンス~エリートな彼の一途な独占欲

ゆっくりと手を引っ込めようとしたけれど、それより先に彼のスプーンが私のアイスを掬った。

「じゃあもらう」

そのまま口に運んでいく様子を目で追う。すると織田くんは「ん、美味しい」と言って目を細めた。

そして今度は彼が自分のアイスを差し出してきた。

「滝本も俺の食べる?」

「えっ!?」

「美味しいから、ほら」

うっ……! これは一口もらわない方が逆に変な流れになるよね?

「えっと……じゃあ」

ドキドキしながら彼のアイスを一口スプーンで掬い、ぱくりと食べる。だけどドキドキし過ぎて味がよくわからない。

「どう?」

「うん、美味しいです」

答えると彼は口元を手で覆った。

「なんで敬語?」

「いや、それはちょっと……」

ドキドキし過ぎて敬語になったなんて言えなくて、パクパクとアイスを口に運んでいく。

さっき織田くん、自分も緊張しているって言っていたけれど本当なのかな。心を乱されているのは私だけのような気がする。

少しすると織田くんはまた「フフッ」と笑った。