「……うん」

見つめ合って笑い合い、キスを交わす。

これからはずっとこうして甘い時間を過ごしていけるんだね。


陸人に抱いた恐怖心も、忘れつつある。それはこうして織田くんと幸せな時間を重ね、そして結婚に向けて進んでいるからかもしれない。

ふたりで住む新居は、彼の勤め先にある宿舎。そこから私も今まで通り職場に通い、仕事を続けるつもりだ。

式場を見に行ったり、結婚指輪を選んだり。まだまだふたりでやること、決めなくてはいけないことがたくさんある。

ひとしきりキスを交わした後、彼はふと思い出したように言う。

「そういえば俺たち、お互いのことをずっと苗字呼びだよな」

「そう、だね」

そもそも高校時代からお互いのことを「滝本」「織田くん」と呼び合ってきたから、それにすっかり慣れちゃっている。

「でも俺と結婚したら滝本も“織田”になるんだ。……そろそろお互い、舌の名前で呼び合わないか?」