怒られるのは久しぶりだからか、ビクビクしながら門脇部長と向かい合う形で座ると、彼は呆れ顔を見せた。

「そんなに怯えるな。俺は熊か鬼か? ……さっきしっかり叱ったからな。謝罪の言葉も聞いたし、これ以上は咎めん」

「えっ……?」

そうなの? じゃあどうして門脇部長はわざわざオフィスから私を連れ出したのだろうか。

彼の真意が読めずジッと見つめる。すると門脇部長は腕を組み、椅子の背もたれに寄りかかった。

「バイヤーになってからミスをしたことがなかったお前が、ここ二ヵ月は小さなミスを連発しているよな? 加えて今日の失敗だ。……上司としてはなにかあったのかと思うだろ?」

「門脇部長……」

驚いていると、彼は私の様子を窺いながら尋ねてきた。

「どうしたんだ? 悩みがあるなら、相談に乗るぞ」

この二ヵ月、ミスを連発してばかりいる原因は自分がよく一番わかっている。

これまで仕事中に他のことを考えるなんてこと、一度もなかった。それなのに仕事中でもある人物が、私の心を占めている。