「松木くん!どうしたの?」
お互いが近づいた。
車の邪魔にならない端のほうで、向き合う。
松木くんは少しうつむいて、わたしと目を合わせたり、少しそらしたりする。
「松木くん…?」
いったいどうしたんだろう。
松木くんは意を決したかのように口を開いたと思えば、一度小さく息を吐いた。
その息が白く染まっているのをわたしはじっと見た。
「俺………西埜が好きだ」
風の音と、車が走る音のなかで…彼が言った言葉は、しっかりとわたしの耳に届いた。
松木くんは真剣な表情でわたしを見つめている。
「9月にフラれたときは、もう付き合えなくても友達でいられたらいいって思ってた。だけど……やっぱり、諦められなくて。…俺と…付き合ってください」
わたしは驚いてなにも言えなかった。
メグちゃんが言っていたことが正しかった。
まさか、まだ好きでいてくれてたなんて…。
「返事は、いつでもいいから…考えてほしい」
その言葉に、わたしはこくんとうなずいた。
「寒いのに引きとめてごめんね。気をつけて帰ってね」
「うん、ありがとう」
わたしは小さく手をふって、松木くんに背を向けた。



