時刻は7時25分。
そろそろ帰らないとな、と考えていると。
「え~!!世良くん、もう帰っちゃうの!?」
女の子のそんな嘆く声が聞こえてきた。
振り向くと、世良くんは脱いでいたブレザーを着て、鞄を探していた。
世良も、もう帰るんだ。
思わずドキッとした。
「世良がもう帰るとか知らなかった、今日6時開始でよかったわ~!」
「6時開始にしてほしいって世良が言ってきたんだよ。な、世良!」
委員長の橋本くんが笑顔でそう言った。
え、そうなの?
わたしはびっくりした。
世良くんが言ったからだったんだあ。
てことは、世良くんもみんなと長く過ごしたいって思ってるってことだよね。
うふふ、うれしいなあ。
わたしももう出なきゃいけないけど、世良くんとふたりで退席するのはちょっと気まずいな…。
ほかの女の子になにか勘違いされそうだし…。
そう思って世良くんとは数分の時間差で、世良くんと同じくみんなに見送られ、メグちゃんに「お金、ありがとう!明日返すね!ばいばいっ」と伝えて座席をあとした。
「ありがとうございました、またお願いしますっ!」
レジに立っていた男の店員さんにあいさつされ、焼肉屋から出ると冷たい空気に包まれた。
うう、寒いっ。
思わず身を縮めた。
今日はメグちゃんが払ってくれるから、なんだかタダで焼肉を食べたかのような気分になった。
ここから最寄りの駅に向かう。
5分もすれば着く。
近くてよかったぁ。
駅へと歩き出そうとしたそのとき。
「──西埜っ」
名を呼ばれ、振り返るとそこには焼肉屋から出てきた松木くんが立っていた。



