キスからはじまる



「いきなりどうしたの?」


「えっと…」


わたしは今日、メグちゃんに世良くんのことを相談しようと決めていた。


ざっくりとした説明で、世良くんにキスされたことを話した。


話を聞いたメグちゃんはまたフラペチーノを吹き出しそうになっていた。


「せ、世良って…うちのクラスの世良匠、だよね!?」


「う、うん」


「え、どゆいうこと!?なんでそんなことに…!?」


驚きが隠しきれないといった様子のメグちゃん。


「わ、わたしもわかんない。不意討ちだったから…」


「世良…あのクールな世良が…?」


「わたしも同じ意見だよ。わけがわかんないよ」


例えば世良くんが女の子大好き人間だとしたら、完全遊びだなって分かる。


だけど、世良くんは言わば正反対の人間だ。


とりあえずモテるのは知ってるけれど、だれかと付き合ったとかそういう類いの話は聞いたことがない。


そんな人がどうしてわたしにキスをしたのか。


考えても考えても答えは出てこない。


「世良、胡春のこと好きなのかな?」


「ぶっ」


今度はわたしが吹き出してしまった。


「いやいや、それはないよ!だってわたし世良くんと話したことないんだよ?」


「一目惚れとか」


「いやいやいや…」


世良くんがもしわたしのことをスキだとしても、いきなりキスしてくるとか絶対おかしい。むしろそんなことしたら嫌われるだろう。


「胡春、その様子だと、嫌ではなかったみたいだね?」


「そ、それは…」


…そう、さきほど“嫌われる”といったけれど、わたしは世良くんのことを嫌いになっていない。


キスされて嬉しいとは言いがたいが、少なくともメグちゃんのいうとおり嫌ではなかった。


“嫌”という感情より“驚”と“照”と“恥”のほうがでかいと思う。