ある日、紫鬼は夕食の魚を取ろうと島の海辺へと降りていきました。


今日はイワシにしようか、
カツオが獲れたらいいな、


そんな事を思いながら、
ふと浜辺に・・・誰かが倒れているのを見つけました。



「あれは・・人間・・・?
人間の女か・・・?」


いつも人間を家畜のようにいたぶる仲間の鬼達を遠目で見ていた紫鬼が、初めて人間に接する瞬間でした。


「お、おい。こんな所で・・。」

紫鬼が倒れていた人間に声を掛けると、

少しだけピクッとした人間が恐る恐る顔を上げて紫鬼を見つめます。




「鬼・・・。」


「け、怪我をしているのか?」


「よくも・・旦那を・・・。」


額から、更に口からも血を流した人間の女は、紫鬼を恨めしそうに見つめながらそう呟くと、

ゆっくりと目を閉じて、
もう二度と動くことはありませんでした。