「バカみたい…」


なぜだか、美羽は怒っていた。

その理由が俺にはさっぱり解せなくて、
無意識に首をかしげていた。

少し伸びてきた襟足が首筋をかすめる。

「なんで…?なんで分からないの?」

ひと思いに、彼女は言った。

「ずっと一緒にいたいに決まってるじゃん。陵にずっと生きててほしいって、そばにいてほしいって、そう思ってるに決まってるじゃん!」


その言葉は、俺の心臓に突き刺さった。
泣けてくるぐらい悲痛な叫びは、消えることなく、俺の思考回路にまとわりついて離れない。


長い沈黙が病室を呑みこんだ。

美羽の眼から、いくつもの涙が溢れる。
互いの嗚咽が混ざり合い、やがて空気に溶けた。