空港を出ると、頼んでいたレンタカーを借りるため荷物を取って表に出る。

「尋、こっち。」

千尋の荷物を一緒に持つとバスに乗り込んだ。

「沖縄って……前に住んでたの??」

はぁ??

意味の分からない千尋の質問に「何で?」と質問で返すと

「だって、迷いもなく進むから。
出口だっていっぱいあるのに…………」と

「あぁ、車に乗ってるから標識を見るのが尋より早いのかもな。」

「…………カッコいい。」

プッ。

可愛い反応は、男心をくすぐる。

楽しい旅行になりそうだ。

レンタカーを借りると、ようやく二人の時間が始まった。

「いつもより小さい車で狭いけど、我慢してくれる?」

小回りの利く軽自動車を借りたんだけど、ちょっと小さ過ぎたか?

荷物が多くないからいいかと思ったが……ゆったりした方が良かったかもしれない。

隣に座る千尋を見るとニコニコと機嫌が良い。

「この車……とってもいいね!
いつもよりも、先生が近くに感じる。」と………

彼女は俺と違って裕福な家庭で育った。

お嬢様学校というだけあって、入学金から始まって……全てが公立よりも高い。

他の私学に比べてもだ。

家族仲は良くないが、金銭的には苦労していない。

それだけに、俺との生活に不満を感じないか不安もあったが………

取り合えず、大丈夫みたいだ。

育った環境の違いを埋めるのは、好きだけではどうにもならないからな。

学生時代付き合っていた彼女がそうだった。

奨学金を借りて大学に通っていた俺は、バイトと授業でいっぱいだった。

旅行にショッピング、外食と、彼女は普通の学生がおくる生活を望んでいた。

特別贅沢がしたかった訳ではないだろうけど………

俺には、デートやイベントを楽しむだけのゆとりはなかったんだ。

「私のことを大切にしてない。愛しているならもっと考えて!」

彼女の一言に

これから先、望まれた幸せを返せる自信がなくなり別れた。

結婚に子育て………

色々な面で期待されることが、重苦しく感じそうだったんだ。