「はいはい。そう言えば、カツ丼なのに、ちょっとシンプルですね。けど、ソースカツ丼は、それほど珍しくないですよ。」

「そうだな。この辺りでは、ソースカツ丼を出す店は無いが、誰も知らないほど珍しい料理と言う訳でも無い。」

「まぁ、それもそうですね。じゃあ、次の問題です。」

 そう言うと先輩は、携帯電話を操作して、新たな写真を選び、薄紫の小さな花の名前を皆に聞いてきた。

「むむ……。植物のことは専門外だぞ。」

「綺麗な花ですね。」

 二人は答えに詰まるが、その薄紫の小さな花が、何の花であるのか、僕にも分からなかった。花の形だけを見ると、小菊の花のように見えるのだが、料理の名前を特定しろと言っているのに、花の写真を見せて、先輩は、何を問うつもりなのだろうか。

「どうだ、お前は答えられるか。」

「形だけ見ると、小菊の花ですよね。」

 それを聞いた先輩がニヤリと笑い、ウェイトレスが、ふと気付いたように声を上げた。

「あ、分かった。確かに小菊です。花と言っても、見て楽しむだけじゃないですよね。」

「その通り。さて店長、いいヒントが出ましたね。小菊の花は、見て楽しむだけじゃないんですよ。」

「ええい、分かってる。もう少し時間をくれ。」

「いいですよ。もうちょっと待ちましょう。」

 店長は渋い顔をしながら、答えを思案するが、延々と考え込むばかりであった。

「あー、もう。渋い顔しちゃって。そんなに考え込まなくてもいいんですよ。少女漫画だったら、店長が額に手を当てて、こんな時に……。どうすれば、いいのか。今の俺には、そんなことすら、分からない。なんて思い悩むシーンになっちゃいますよ。もちろん、背景に花が描き込まれていますからね。」

「ちょっと待った。今の話はなんだ。お前、本当に答えを知っているのか。」

 突拍子も無い発言に対し、先輩がウェイトレスを問い詰める。