「先生、質問があります」

「…また来たか」



煙の匂いを漂わせながら先生は眉間にシワを寄せて言うけれど。

そもそも、ここは元々私のお気に入りの場所。

今日だって息苦しい世界から逃げたくなってここに来たら、先に先生がいたってだけの話。

でも、ちょうど良かったのかも。

この人に聞きたいことがあったから。



「どうして人間は無難に生きようとするんですか?」

「楽だからだろ」

「楽だから?」

「そ。自分で自分を守ってるんだよ。人間は賢くてズルイから」



先生は良い大人ではないけれど、

綺麗事だって言わないけれど…

誰よりも私が望んでいる答えをくれる人だった。