6.悪魔さまの誘惑

結局、あれから二人でお昼寝をした後、椿社長と一緒に夕飯を作った私は、そのまま朝まで彼と過ごしてしまった。
もちろんキス以上のことは何もなかった。
ただ濃厚なキスを繰り返すだけで、その舌が私の肌に触れることはない。
本気で抱き枕だと思っているのではないかというくらい、私を離さずに眠るくせに、手を出そうとしないのだから、一体なんの為に私を呼ぶのかわからない。

だから月曜の朝、その部屋を出て行く時は、これが最後だと自分に言い聞かせたはずなのに、私はその日のうちに椿王子の部屋に舞い戻ることになった。

≪名刺入れ、忘れてるよ≫

悪魔さまからのメールによって。

「名刺入れ、鞄から抜き取りましたよね?」

「ん?何が?」

仕事を終えたその足で急いでマンションに行くと、男はわざとらしく首を捻る。

「名刺入れですよ?忘れるなんておかしいです!」

「鞄から落ちたんじゃない?」

「落としません!困ります!」

テーブルに置かれたそれを急いで鞄に入れる。

「その中の何人にナンパされた?」

「へ?」