5.悪魔さまの気まぐれ

「つまりそれって、どういうこと?」

日曜日、表参道にあるカフェのオープンテラスで首を傾げた里香の言葉に、私は何度目かの溜息を吐く。

「それは私のセリフだから」

「芙美ちゃんとその彼は、まだキスしかしてないってことでいいんだよね?」

「ええ、そうね」

「会ったのは、昨日で3回目」

「そう。3回も会った」

「お家には泊まってしまったけれど、何もなかった」

今したばかりの話を確認するように喋る里香に、私は顔を顰めて頷く。
だって本当に、何もなかったのだから。

「つまり、あの芙美ちゃんが誘っているのに、手を出すことなく一夜を過ごしたと」

「……だから、そうだって言っているでしょう?わかったなら何回も言わないでよ。嫌がらせ?」

本当はこんなこと誰にも言いたくないのに、一人で悩むのも嫌で、休日だっていうのに里香を呼び出してしまったのは私だ。それでいて、こんな態度を取ってしまう自分の性格が嫌になる。
こんな話を、必死で聞いてくれる里香とは大違いだ。

「だって芙美ちゃん、それって普通だよ?」