心臓が、確かな高鳴りを私に伝える。

「私に関係あるなら、教えてください」

いったいどんな顔をして目の前の男を見つめているのか、想像すると怖い。
何度もキスをした椿王子の唇が、優しくない笑みを零した。

「人の女に手を出すどころか玩具にしようなんて、そんなくだらない事を考えるとどうなるか、丁寧に説明しに行っただけだよ」

甘く優しい声なのに、怒っているのが伝わった。
喉が震えて、上手い言い訳も出来なくなった。
どうしてあんなことを考えたのだろう。
疑って、勝手に傷ついて、酷いことを言って、怒らせた。
嫌われても自業自得だ。

「それで、芙美から俺に何か言う事は?」

その手が、俯いていた私の顎先を掴む。
強引に重なった視線に、どこから話すべきかもわからない。

「ご、ごめんなさい」

「何が?」

「私、勘違いして」

「勘違いって?」

全てをわかっていて聞いている。

「だからその、そういう噂を聞いて、てっきり椿社長もそうなのかと思って……」