整理されない頭で、渡されたシャンパンを口に含む。

ううん。整理したくないだけかもしれない。
もしかしたら私は、とんでもない間違いをしていたのかもしれない。
だとしたら、すごく失礼な事を言ったのかもしれない。

頭の中をグルグル回る記憶を辿りながら、ぼんやりと会場を歩く。考えるほど、頭がパンクしそうになる。

「甘いもの、食べよう」

私は気を落ち着かせるように一人呟くと、マカロンが並ぶテーブルに向かって歩き出した。
だけどその直後、目の前に黒い影が現れた。

「わっ」

あまりに突然で、ぶつかりそうになってよろけた私の背中を、「危ない」と口にしたその人が、抱き寄せるように支えた。
バランスを崩した私の手元で、シャンパングラスが傾きかける。

零れるかもしれない。

そう思った時、その手が優しく触れた。

「さすがに二度目は勘弁」

私からグラスを取り上げた手をゆっくりと辿る。
まだ半分以上残っていたシャンパンは、当たり前のようにその口元に運ばれる。唇の中へと流れていくそれに合わせて上下する喉仏が、色っぽいと思った。
真っ黒のタキシードに身を包むその男。