「芙美ちゃん、か」

ニコリと笑う男に警戒しながら、私は恐る恐る尋ねる。

「あの、あなたは?」

きっと絶対、普通ではない。
冷静さを取り戻すほどに、目の前の男が纏う空気を強く感じるようになっているのは気のせいではないだろう。
まさか芸能人とか?そう考えると、どこかで見たような気もする。
必死で記憶を辿る私を楽しむように見ていた男が、その優しくない笑みを保ちながら口を開いた。

「王子」

「・・・え?」

「椿、王子」

「つばき、おうじ?」

目が眩みそうなほど整った顔が近づいた。

「そう、白馬の王子様」

「へ?」

「なんてね」

「え・・・」

キラキラと輝く会場に影が出来たと思ったのは、その男が私との距離をまた詰めたからだった。
ありえないくらいに近づいて、また強引に顎を掴まれた瞬間、唇が重なった。

「ンンッ!?」