7.悪魔さまの思惑

「芙美、おはよう!」

「冬月先輩!おはようございます」

掛けられた声に振り返ると、秘書課時代にお世話になった冬月先輩がいた。

「うわ!何その顔?」

「すみません、寝不足と飲みすぎです」

「また男?」

呆れたように聞かれた言葉に返す言葉がなくて黙り込んだ私に、「否定してよね」と先輩が言う。

「すみません」

社長の第二秘書である冬月先輩とは、一緒に社長のお供をすることも多く、プライベートでも二人で飲みに行ったりする。

「里香ちゃんが心配していたわよ」

「里香は大袈裟だから」

「でも変な噂もあるから、社交辞令で付き合い過ぎるのも程ほどにしなさいよ?」

「変な噂?」

「そうそう。あんたを狙っている男たちがいるって噂」

「なんですかそれ?」

初めて聞く話に首を傾げると、先輩は声を潜めて話を続ける。

「最近、若い社長たちの中に危険なグループがいるのよ」