選んだ先は牢獄の中

初めて早百合が好きだと自覚したのは、小学校高学年の時辺り。
その頃の小学生は色恋沙汰にハマり出す年頃で、毎日のように誰誰は誰誰が好き、などの噂が飛び交っていた。
そんな中俺も仲の良い友人に好きな人はいるのか、と尋ねられたことがあった。
その時、頭に真っ先に浮かんだのが、クラスで一番可愛い子でもなく、俺とよく遊んでいた子でもなく、まだ幼い妹であった早百合だったのだ。
最初は「いやいや。さゆは妹なんだから…」と早百合を一瞬候補から消し、他の同い年の女の子を思い浮かべたのだが、俺の脳内で『東由宇 恋愛 好きな人』と検索をかけると、『東 早百合』しかヒットしなかった。
それからというもの、早百合を意識してしまうようになり、顔を合わせる度に顔が熱くなり、早百合に甘えられると今まで以上に喜びを感じるようになってしまった。
今ではそれなりにセーブできているが、当時は子供特有の感情がすぐ面に出てしまう体質になかなか苦労したものだ。
早百合が小学生の頃はまだ3歳差は大きく、妹として可愛いし好きなんだ!と言い訳できたが、早百合が中学生になってからは早かった。
だんだん顔立ちや体つきが女性のそれとなってきて、今まで以上に一人の女性である『東 早百合』と恋人になりたい、なんて思うようになってしまった。
妹をそんな目で見るなんて最低だ。そんなの分かってる。
この想いを自覚してから、早百合は『義理』の妹だから好きになっても大丈夫なんて自分を許しているようで、自分が弟と妹を本当の兄妹って認めていないようで、とても自分に嫌気が刺していた。
早百合はもちろん、隼斗に陸斗、陽向だって血が繋がっていないだけで、本当の兄妹には間違いないのに。
弟達が初めてこの家に来て「おにいちゃん」って呼んでくれた時から「絶対にこの子達を守る」って決めていたのに。
俺は早百合を妹として愛さなければならないのに。
「とにかく!今からでもいいから着替えてきなさい」
「えー…ご飯食べてからじゃだめ?」
「だーめ。ご飯作るから早く着替えること。分かった?」
「はぁい」
早百合は俺の腕を解放し、肩紐を直してベッドを降りた。
…やっと嵐が過ぎ去ったか。朝から疲れてしまった。
さっさと朝ごはんを作ってこの事は忘れよう。